中小・ベンチャー企業のための人事評価制度
「人事承認」

中小企業・ベンチャー企業には、中小企業・ベンチャー企業にあった人事評価制度が必要です。
大企業が行っている人事評価制度は、中小・ベンチャー企業経営の足を引っ張ることにもなります。

人事評価は難しい(?)

「人事評価は難しい」

経営者、管理職者、人事担当者、みなさん口をそろえておっしゃいます。
確かに難しいと思います。
ましてや自分1人だけで評価を行うならまだしも、ある程度の規模の企業になると複数の人が評価を行うケースが多いです。
そうなると、誰が評価しても同じ結果にならなければならない、なんてことになります。
評価される側にとってみれば“評価する人が変われば評価が変わるなんておかしい”ってことにもなりますもんね。
また、“オレの上司のシオノ課長は辛くて厳しい、同僚のアイツのサトウ課長は甘い”と不公平を口にしたりもします。
この評価の均一化のためには「客観的な絶対評価」が要求されます。
「絶対」なわけですから、誰がやっても同じ評価となるわけです。

でも立場や場面が変われば評価が変わることなんて、当たり前だと思うんです。私は。
例をあげるまでもありませんが、次の話を見てください。

ここは会議室。
今後の営業方針を決める重大な会議の場面です。
さまざまな意見が飛び出す。議論する。停滞する。また意見が発せられる。
そんなやりとりを長時間くり返してきました。
出席者の意見もほぼ出揃い、そろそろ結論が固まるだろうという時間帯。
誰もが長時間の疲れと、もう少しで終わりそうだという安堵を感じ始めた頃です。

この長く、激しい会議を進行役としてまとめていた営業現場監督のチョウノ部長がそろそろ裁決を取ろうかというところです。
会議の様子を見に、ムトウ社長がみんなに気づかれないようにそっと入ってきました。
そのことにまったく気づかない営業社員のハシモト君。
ハシモト君は会議終盤なのは重々承知しています。けれど、どうしてもクリアにしておきたい事がありました。人一倍元気です。そして、口を開きます。
「アノ件について、自分はこう思うのですが、みなさんはどうでしょうか?」
ずっと出席していた人の中には、「正直、まだ続けるの?」と思った人もいるようです。

ここで、今までこの場にいて進行役として頑張っていたチョウノ部長。こう感じました。
「ハシモトか。もう会議も終盤で意見も出そろっているじゃないか」
「アイツはなんて協調性のない奴だ」

今までこの場にいなかったオブザーバーのムトウ社長。こう感じました。
「ハシモト君か。みんながおとなしくしている中、積極的な人物だな」
「それに自分の意見もちゃんと持っている」

さて、どう思いますか?

人事評価の際の評価誤差

人事評価の世界では、次のような常識があります。
『評価者が人間である以上、何らかの性格やクセがあるために、必ずこのような評価エラーが生じてしまうことは避けられないが、評価者はできる限り、こういうエラーを避けるように努力すべきだ』
というものです。

1.ハロー効果

何か1つのことが良いと、すべてのことが良くみえてしまう傾向のことです。部分的な印象で、全体的な評価を行ってしまうエラーです。

2.中央(中心)化傾向

無難にしておこう、ことを荒立てないでおこう、といった気持ちから、標準点に評価結果が集中してしまう傾向のことです。また、評価者が被評価者のことをよく知らない場合や、評価基準が不明確であるときにも起こりやすい評価エラーです。

3.寛大化傾向

評価者の自信のなさや心情的な人間関係への配慮から、評価が甘くなりがちな傾向のことです。実際の評価よりもプラスに評価されることになります。

4.厳格化傾向

評価者が白分の知識や能カレベルと比較して、被評価者のレベルを厳しく評価してしまう傾向のことです。

5.対比誤差傾向

評価者自身が自分を基準にして被評価者をみることで、過大または過小に評価してしまう傾向のことです。例えば、沈着冷静でまじめ型の管理者は、ひらめき型の部下を実際の仕事上の成果と関係なく過小に評価してしまうといったことがあります。

6.論理誤差傾向

思い込みが先行して事実を正確にみることができず、論理的に飛躍してしまい、誤った評価をしてしまう傾向のことです。

7.直近効果

時間的な長さがあるにもかかわらず、最近の印象に引きずられて全体の評価をしてしまう傾向のことです。日常的に被評価者を観察することをせずに、評価時期の直前だけ被評価者のことを考える評価者に起こりやすい傾向とされています。

人事評価の一般常識

人事評価の世界では、次のような常識があります。

『評価者が人間である以上、何らかの性格やクセがあるために、必ずこのような評価エラーが生じてしまうことは避けられないが、評価者はできる限り、こういうエラーを避けるように努力すべきだ』
というものです。

そして、
『これら「評価の均一化」と「評価技術の向上」を目指し、理想の「客観的な絶対評価」に近づけよう』
『そのためには「評価者研修」が必要である』
と、このように世の人事コンサルティング会社や理論家たちは訴えます。

かくしてそのような方々は、人事評価制度を導入しようとする会社に、研修パッケージを売り込んだり、研修ビデオ販売をしたりするのです。
そこには、いくつかの事例がドラマ仕立てで展開されます。
そして、こういう場合はこのように評価しましょうと場面ごとに各評価者の評価結果が合うように事前訓練をするのです。

やってられますか?

この商売が“悪い”とは決して思いません。
が、相手を、会社を選ばなくてはならないと言いたいのです。
それは「管理者の養成」や「管理体制の充実」といったことに時間とお金がかけられる会社 ― 終身雇用を前提とし、将来回収が見込める会社 ― を相手にする商売です。
そうです。大企業が相手の場合です。
中小企業やベンチャー企業はそんなことしてはいけないと思うのです。

中小・ベンチャー企業ができる人事評価の方法は

人事評価は経営の目的ではありません!
それは経営を効率よくするための手段の1つです。
当たり前のことです。
わざわざここで経営者であるあなたに言うことではありません。
そんなことは、あなたも私も十分承知しています。
でもその「当たり前のこと」を “本当にわかってない” あるいは “わかっているけど自分の商売ツール確保のため、売上のために知らんぷりしている” コンサルティング会社や専門家が多いのです。―「理想服従型せんもんか」と名付けましょう。

人事評価制度の作成や見直しについて専門家を頼る経営者は多いものです。
そのこと自体は間違いというわけではありません。
でも理想形を満足に満たそうとして時間とお金をかけ続けていると、
『いったい何のための 人事評価 なんだ』ってことになります。
「理想服従型せんもんか」もやいのやいの言ってきます。
“社長、キッチリやらないと社員の不満がでます。不公平です。評価者研修しましょう”
社長も乗りかかった船です。後戻りするにも勇気がいります。
そこで評価者である管理職社員にハッパかけます。
“これも管理職の仕事だ” “なんとかマスターしなさい”
こうなると、あたかも人事評価自体が組織の目的になってきてしまう、というわけです。

大企業であればあるほど、「管理」にある程度の比重をおくことがでます。
また、そうしなければならない側面もあります。
つまりは「規模」が「非効率」を飲み込むから目をつぶってもいられます。
大きいから非効率なのか、非効率を許容するための大きさなのか、その議論は別として、中小企業やベンチャー企業はそのようにはできません。
そして、してはならないと私は思うのです。
「管理」に時間とコストをかけすぎることは危険です。必要最小限にとどめるべきです。

さてそれではどうしましょうか?
評価は難しい。評価者研修もしない。
それでは人事評価をやめてしまいましょうか?
やめて何か困ることはありますか?
そもそも人事評価って何で必要なのでしょうか。

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