次世代法・認定基準(その2)


「次世代育成支援対策推進法は、21世紀の経営資源」
メルマガバックナンバー005号(H17.04.26)

あの人の言葉発見


「いざとなったら、人事部の誰かに泣いてもらうしかないか」と、ある金融機関の人事部幹部は頭を抱える。

〜(次世代法の)行動計画で金融機関の人事部をことさら悩ませているのが“男性の育児休暇(育休)”だ。

女性の育休制度についての運用は、ほぼ完璧。
だが行動計画では、期間中に男性の育休取得者を、最低1人は出さねばならないのだ。

男性の育休取得のハードルはそもそも高い。
育休中は基本的には無給である。

人事制度では先進的なソニーですら過去7人しか取得者がいない。
ソニーの場合は、男性育休取得者のために、自宅で仕事のできる環境を整え、(次世代法)に備える。

だが、金融機関は仕事の社外持ち出しは厳禁で、その手は使えない。
なにより、前例がないなかで、4月から急に取得者が現れるとは考えられない。

とはいえ、行動計画を達成しなければ「子育てをサポートする企業」であることを証明する認定マークがもらえない。
福利厚生が売りの金融機関が未認定では、採用活動への影響は計り知れない。

さらに「最近では投資基準として、人事施策に関する海外からのヒアリングが多い」(地方銀行幹部)
など、投資家の目も厳しい。

そこで、せめて最低限の実績は残そうと、冒頭のように人事部など関係部署の者を“人身御供”とするような、その場しのぎの対策まで断行されそうなわけだ。

男性の育休取得率は、全国平均で0.44%。
厚労省は10年後、これを10%まで引き上げるのが目標だという。
次世代法の大きなハードル
男性社員の「育休」取得実績
週刊ダイヤモンド 2005.4.2

制度のしくみ


    〔1〕次世代法関連
     1.次世代育成支援対策推進法
     2.行動計画策定指針
     3.行動計画内容
    〔2〕関係法令
     1.育児・介護休業法
     2.労働基準法
     3.男女雇用機会均等法
    〔3〕労働社会保険
     1.給付
     2.保険料等
    〔4〕助成金、奨励金
    〔5〕法人税
    〔6〕次世代法認定企業


〔1〕次世代法関連 1.次世代育成支援対策推進法

次世代法・認定基準(その2)

ぼんさく
前回、やけにもったいぶっていたモノ。
出してもらおうか。

ペコポン
「認定基準」の五、だね。

その前に、参考に前回記載の7コ全部をあげておくね。

一、 行動計画指針にあるような、雇用環境を整備する計画を策定すること
二、 計画期間が、2年以上、5年以下、であること
三、 策定した計画を実施して、その目標をクリアしたこと
四、 3歳から小学校入学前の子を育てている社員が利用できる「育児休業など」を採用していること
五、 計画期間内に次の2つを満たすこと
・男性社員:育児休業等の取得者が最低1人いる
 かつ
・女性社員:育児休業等取得率が70%以上である
六、 次のどれかを実施していること
(1) 所定外労働の削減のための措置
(2) 年次有給休暇の取得促進のための措置
(3) その他、働き方の見直しにつながるような労働条件整備のための措置
七、 今まで法令等に違反していないこと


ぼんさく
前回は、二、三、七、の説明だったな。

ペコポン
それでは今日の本題。

五、計画期間内に次の2つを満たすこと
(社員300人以下の会社には、特例あり)

男性社員:育児休業等の取得者が最低1人いる
かつ
女性社員:育児休業等の取得率が70%以上である

この基準が1番の難関なんじゃないかな。

ぼんさく
ピンとこなけど?

ペコポン
まず「男性・取得人数条件」

育児・介護休業法(育介法)では、社員が、会社に休業を申し出た場合に、はじめて育児休業をとることになる。
だから、社員が申し出ない限りは、育児休業は成立しない。

ぼんさく
申し出るんじゃないの?

ペコポン
育介法ではね、育児休業している間の社員の給料については、何も決めていないんだ。
「休んでいる間も社員に給料払いなさい」とまでは言ってない。

ぼんさく
1年間働いていない人にも給料払いなさい、って言われたら、酷だよね。
会社はやっていられない。

ペコポン
そうでしょ。
普通は、少なくとも今までは、「無給」としている会社が多い。
するとどうだろう。
(1) ただでさえ「育児は女性」「男は仕事」の意識がある男性が、
(2) しかも給料無し、で会社を休んで、
(3) さらに休みが長期ならば「仕事に戻りづらいのでは」との不安を持ち、
(4) 「職場からの反感もあるのでは?」と気にしながらはなかなか休めないよね。
普通に考えて。

ちょっと「認定」とは離れるけど、次世代法とその運用では、こうした「育児休業の取りづらさ」を打破しようともしている。
その話題の回を、お楽しみに。

ぼんさく
そうかぁ。
たった男性1人のことが、そんなに難しいのか。

ペコポン
さっきサラッと「1年間」と話しを進めたが、育介法では、育児休業の期間を最長1年(1年6ヵ月の場合あり)としているけど・・・

ぼんさく
けど?

ペコポン
うん。

ぼんさく
けど、何?

ペコポン
大きい声で言いたくないけど・・・、下限は、ないんだ・・・

ぼんさく
ん? というこは?
1日でも、OKってコト?

ペコポン
まぁ。 そう。

ぼんさく
1日だったらナンとかなるんじゃない?

ペコポン
あまり、大きい声で言わないよう。
最も極端な例として、「1日」をあげたけど、「1日」にこだわる必要もない。
ただ、「1年」(1年6ヵ月)にとらわれすぎないようちょっと注意を促しただけ。
設定は、当然社員からの要望によって決まってくるモノです。

ぼんさく
気を付けます。
「認定」は「1日」でも受けられるの?

ペコポン
...............はい。
つぎ「女性・取得率条件」行こう!

ぼんさく
「取得率」はどうやって?

ペコポン
計画期間内に育児休業等をした人の数(→分子)を
計画期間内に出産した人の数(→分母)で割って計算する。
この割合が、70%以上。

ぼんさく
10人中7人かぁ。
これも難しそうだね。

ペコポン
社員数が少ない中小・ベンチャー企業は、分母の数が少なくなるよね。
70%以上を満たす、分母・分子の関係を見てみようか。

 10人 → 7人
 9人 → 7人
 8人 → 6人
 7人 → 5人
 6人 → 5人
 5人 → 4人
 4人 → 3人
 3人 → 3人
 2人 → 2人
 1人 → 1人

ぼんさく
うーん。厳しいなぁ。
人数が少ないほど、割合が高くなっちゃうんだ。

ペコポン
人間は、小数点以下はいないもんね。
でも、考えて。
人数が少ない中小・ベンチャー企業の強み。
出産1人のときに1人の育休取得って、かなり現実的じゃない?

ぼんさく
あー。そう言えばそうだね。

ペコポン
わかった?
このケースで、うまく計画期間にあてはまれば、いいよね。
逆に言えば、うまく当てはまるように計画期間を設定すればいいんだ。

ぼんさく
なるほどね。
社員に聞いて、調べてみよう。

ペコポン
ちょっと待て!!
ただし! かなり注意が必要だよ!
妊娠や出産は、ものすごくデリケートで、とってもセンシティブで、ひじょうにプライベートな話題。
社員から話を聴くにしても、聴き方や、聴く範囲によってはヘタするとセクハラになりかねないので慎重に!
また、例えば本人が「退職」を願っているのに、「認定」のために「育児休業」を強要するとパワーハラスメントにも該当してしまうかも。
そうなったら、裁判沙汰、損害賠償モノだよ。
ダメージは決して少なくないよ。
「認定」に目がくらんで、行き過ぎにならないよう、くれぐれも注意してください。

ぼんさく
はい! 注意します!
男は、気を付けて、
女は、注意すること、
忘れません。

ペコポン
ホントに大丈夫カナ。
それと、もう1つ。
計画期間内に、出産する人が、いない場合、つまり、分母がゼロの場合、70%の要件は満たさないことになり、「認定」は受けられないから、コレも注意してね。

ぼんさく
おぉ。 それも大事だな。
ところで、さっさきから気になっていたんだけど「育児休業等」の「等」って何?

ペコポン
おっ! ぼんさくも慣れてきたね。
子どもが1歳(1歳6ヵ月)になるまでの、育介法の通常の育児休業のほか、小学校に入学するまでの育児のための休業も含んでいるという意味だよ。

ぼんさく
ふーん。
じゃ、300人以下の特例って?

ペコポン
男性の「取得人数条件」と
女性の「取得率条件」は、
通常、計画期間内で判定するけど、300人以下の会社は、計画期間の開始前3年を有利に加えていいんだ。

男性は、計画期間+3年以内に、育休取得1人以上いればいい。
女性は、計画期間+3年以内のうち、育休取得率70%以上になる期間を設定していいということ。

さて、どうかな。
「認定基準五」の重大さがわかったかな?

ぼんさく
うん。まぁね。
でも、やりようもあるね。

ペコポン
そう。
ただし、くれぐれも「認定ありき」にならないようにね。
それが原因で、社員が働きにくい結果となったら、本末転倒だからね。

ぼんさく
会社のために、
経営のために、
社員のために、
信頼とコミュニケーションを大切にして全社一丸となって取り組むことを誓います。

ペコポン
期待してるよ!
それではオマケ。

ぼんさく
今回は、あるのかー。

ペコポン
ぼんさくも気づいた「育児休業等」の「等」。
「次世代法」関連にかかわらず、法律を説明するときには、この「等」がよく出てきます。
条文の中でも、よく見かける文字です。
説明を分かりやすくするために、細かいコトはおいといて、大筋を分かってもらうために使うものですが。

大筋をつかむ目的であれば、それでもOK。
ただし、いろいろな可能性を模索したり、「シロ」「クロ」を検証したり、実務では重要になるモノです。

「等」には、何が含まれるのか。
場合によっては、注意しましょう。

似たようなものに「原則として」「一定の場合には」などが、あります。
「原則として」は、その他にある「例外」のほうが、重要だったり、できると思っていたのに、「一定の場合」が実現不可能だったり、ということがあります。

ぼんさく
オマケの部分は、別に経営者がやるシゴトじゃないな。

ペコポン
あら、ぼんさく。
今頃気づいたの?

誌上しつもん会


Q.行動計画の実施期間中に、その実施状況を国に報告しなければならないでしょうか?

A.報告する必要はありません。
厚生労働省ホームページ
Q&Aから抜粋

わたしの後記


気が付くのが一歩遅かった!
19日火曜、夜7時半、見ました?
NHK「クローズアップ現代」。
「社員の育児支援 揺れる企業」が放映されました。
事前に分かっていたら、前回のメルマガでいいタイミングでお知らせできたのに!
放映に気付いたのは、メルマガ配信後、その日の夜、放送の少し前でした。

普段は見ないNHKの天気予報を見た後、たまたま予告を目にして、知ったのでした。
即ビデオセットです。
30分番組の中で、大手企業3社の内側を紹介しています。
会社の中身を見せてもらえるのは、貴重な情報ですね。

内容については、今後「あの人の言葉」コーナーでご紹介します。

さて。
話題は、ちょっと変わります。

ある人(有名人)が言ってました。
「情報は、欲しいと思っている人のところに集まる」と。

いろんな意味、たくさんの要素、があっての言葉だと思います。
ここでは、それらを掘り下げることはやめておきます。
とりとめもなく長くなりそうですから。

そういえば、昔からの、こんな言葉もありますね。
「求めよ さらば与えられん 門をたたけよ さらば開かれん」

この2つ。
ちょっとニュアンスが違うような。
共通しているとこともあるような。

「昔」のは、強い意志と、明確な行動、があるような。
「ある人」のは、もうちょっとなんかこう、ラクな、というか自然に、とか、勝手に、って感じがあるような。
そこが違う。

頑強な意志って、モノゴトを遂げるのに、必要なモノだとなんとなく教わってきたような気がします。

そして、どちらかといえば、そうやって生きてきました。
今まで。自分は。

道を切り開いてきた、って言うんでしょうか、カッコよく言うと。

でも、NHKの番組情報は、そんな強い意志で望んでいたワケでもないのに、目の前に現れました。
勝手に。
見過ごしてもおかしくないのに。

なんか、こう、うまく言えませんが、コツ(と言うほどでもない当然のこと)が、本当はあって、肩肘張らなくても、もうちょっと自然に生きることってできるんじゃないかって、フト思ったり...。

うーん、話していて自分でもわかんなくなってきた。
NHKの番組なんて、それほどのコトじゃないかなー、とも。

おっと。
そんなことはありません。ここでは。

ぜひ、次回(5月10日)を楽しみにしていてください。 
それでは、よいG.W.をお過ごしください。



  • 採用テーマ
  • 人事評価テーマ
  • 残業代テーマ
  • 仕事と家庭の両立

数事と事株式会社
Copyright:(C) 2012 Kazuo Omata All Rights Reserved.